50代というと子育ても一段落し、余裕のある生活を始めることのできる年代というイメージがありますが、昨今問題となっているのが50代女性の貧困です。
そして、この貧困は既婚者・未婚者を問わず陥る恐れがあります。
ここでは50代女性の貧困について、
- 男女における貧困率および平均給与の差
- 50代の女性が貧困に陥る原因
- 貧困が強める老後の不安についての対策
を解説します。
50代女性の貧困の背景には親族の介護費用の増加、自身の病気など本人ではどうすることもできない事情があるため決して他人事ではありません。
50代の女性の貧困率は?
はじめに以下の図で50代女性の女性がなぜ貧困に陥ってしまうのか、貧困率(収入から税金や社会保険料を引いた可処分所得を高い順に並べ、中央の額の半分に満たない人が全体に占める割合)の現状を確認してみましょう。
図は男女別・年齢階層別相対的貧困率を表しています。
(引用:男女共同参画局「平成24年版 男女共同参画白書」)
このように50代女性の貧困率は15%前後です。
50歳の時点で女性よりも男性の貧困率が高くなっていますが、それ以降は女性の貧困率が高くなっています。
そして、55歳以降の女性の貧困率は、20代~40代の女性の貧困率を上回っているのです。
一般的に若者の方が貧困に陥る場合が多く感じられますが、実はそうではないことが上の図からわかります。
この理由には様々なものがありますが、大きく分けると以下の2つとなります。
- 女性の平均給与が年齢とともに上昇しないため
- 加齢による支出が増えるため
加齢によって増える支出については、50代女性の貧困の原因で詳しく解説するので、ここでは50代女性の平均給与について確認してみましょう。
以下の年齢階層別の平均給与を表した図をみてください。
(引用:平成29年分「民間給与実態統計調査」)
50代の男女の平均給与を抽出すると以下のようになります。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
50~54歳 | 677万円 | 302万円 |
55~59歳 | 669万円 | 298万円 |
このように男性の平均給与は女性の平均給与の2倍以上となっています。
女性の社会進出が進んでいる現代においても、これほど大きな開きがいまだに存在しているのです。
また、女性の給与が年齢を重ねても一向に上昇していないことも図からわかります。
これには女性の非正規雇用の割合が高い点と、女性の管理職が少ない点が関係しています。
このように現代の世の中で女性が年収を上げていくことは簡単ではありません。
そのため50代女性であっても貧困に悩まされるケースがあるのです。ここから先は、50代女性の貧困の原因を解説します。
- 50代女性の貧困率は15%前後
- 55歳以降の女性の貧困率は、20代~40代の女性の貧困率を上回っている
- 女性の給与が年齢を重ねても一向に上昇していない
50代の女性が貧困になってしまう原因は?
50代というと若者に比べて家計に余裕のあるイメージを持たれがちですが、すべての世帯には当てはまるわけではありません。
先ほどみた貧困率の図において、50代女性の貧困率が30~40代の女性の貧困率を上回っていたことからもわかります。
ここからは50代女性が貧困に陥る原因を解説します。
離婚により収入源が自分のみになる
昨今増えている熟年離婚は、50代女性の貧困に大きく関係しています。以下の表は同居期間別の離婚件数の推移です。
(引用:厚生労働省「平成28年人口動態統計月報年計」,2016)
同居期間が20年以上の部分をみると、1985年(昭和60年)には約2万件だった離婚件数が、2016(平成28年)には約3万7,000件にまで増えています。
このような熟年離婚が起こると、離婚した女性は自らの収入のみで生計を立てなければならない状況になりがちです。
そのとき問題となるのが、先ほど確認した男女の平均給与の差です。
長年にわたり専業主婦をしていた場合では、離婚後すぐに正社員に復帰するのが難しいことが多く、貧困に陥ってしまうこともあります。
離婚後も経済的に自立し生活していける算段をあらかじめ立てておくことが必要です。
親の介護や身内の世話
また、親や身内の介護・世話にかかる支出が増えることで家計が圧迫される場合も考えられます。
特に介護施設を使う場合は費用がふくらんでしまうため、世帯収入が一定程度あったとしても貧困に陥る恐れがあるのです。
また介護施設を使うことを断念すると、介護・世話に時間をとらなければならなくなり、結果として女性が仕事を辞めるケースも少なくありません。
辞めるまでといかずとも、介護のために労働時間を減らせば、それだけ収入も減ります。
こうした介護・世話については、毎月一定の支出が発生し続けるため、気づかぬうちに貧困につながるのです。
病気やケガで退職
介護のような他人の世話のみならず、自身の病気から貧困に陥る50代女性も少なくありません。
50代になると更年期障害や乳がんなどに加えて、リウマチや内臓疾患のリスクも高まります。こうした病気に費やす医療費も少しずつ家計を圧迫していくのです。
また体の筋肉や関節が衰えることから、些細なことで怪我をしやすくなります。
そして病気や怪我によって仕事を辞めなければならなくなる恐れすらあるのです。
50代女性の貧困には、こうした様々な要因が考えられます。
- 離婚した女性は自らの収入のみで生計を立てなければならない
- 親や身内の介護・世話にかかる支出が増えることで家計が圧迫される
- 50代になると更年期障害や乳がんなどに加えて、病気のリスクが高まり、医療費による負担も増える
(引用:厚生労働省「平成28年人口動態統計月報年計」,2016)
50代の貧困生活に悩む女性は老後の不安も
そして50代女性の貧困は一時的な貧困のみならず、将来的にも貧困に陥ってしまう可能性が高いことにも注意が必要となります。
なぜならば、50代から先の人生で収入を大きく改善することは決して簡単ではないためです。
老後の不安としては大きく以下の2つがあります。
- さらなる医療費の増加
- 定年による収入の減少
昨今は定年の年齢も先に延びていますが、長く働くことができるのも健康あってのものです。
50代のうちに体を壊すと、定年後の少ない収入の中で増加する医療費を工面していかなければならなくなります。
2016年度の年齢階級別の一人あたりの医療費を見てみると、1年間にかかる医療費は50~54歳では22.8万円なのに対し、60~64歳になると36.3万円、70~74歳になると62,2万円まで上がっています。
さらに、以下診療費の内訳を見ると、70歳代までは外来(入院外+調剤)の割合が高いのに対し、80歳代になると入院(入院+食事療養)の割合が高くなることもわかっています。
こうした自分の力ではどうすることもできない貧困については、行政の手当や支援を活用するのも良いでしょう。
各種の手当や支援を利用することで病気を治療し、生活を立て直すことが大切です。
ここまで解説してきたとおり、50代女性の貧困には社会的な要因も関係しているため、周囲に理解者を見つけることも重要です。
- 50代女性の貧困には社会的な要因も関係している
- 医療費の増加や定年による収入の減少など
- 行政の手当や支援を活用するのも一つの方法
(引用:厚生労働省「年齢階級別1人当たり医療費(平成28年度)(医療保険制度分)」
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