日本の貧困率の高さは近年注目視されている問題ですが、なかでも独身女性の貧困は深刻です。
男女雇用機会均等法や働き方改革など、女性が社会へ進出し地位を高める傾向にある一方で、男女において収入や給与の差が埋まらないのも事実です。
ここでは、女性の貧困問題について理解を深めるために、現状について解説します。
独身女性の貧困化が進む理由
まずは先進国でも起こる相対的貧困について解説し、その上でデータから国内の実態を解説します。
絶対的貧困と相対的貧困
貧困には、以下の2つの種類があります。
- 絶対的貧困
- 相対的貧困
絶対的貧困は、食料や雨風を凌ぐ自宅すらないなど、人として生きる上での最低限の条件すら備わっていない状態を指します。
そのため途上国に多く存在し、絶対的貧困は病気や死などと結びつくこともあり世界でも深刻な問題となっています。
対して日本で多く見られるのが相対的貧困です。
相対的貧困は、その国の生活水準・文化水準と比較して困窮した状態を指します。
食費や光熱費を切り詰めながら生活することはできても、趣味や教育にお金を使う余裕がなく、将来において改善する期待を持つことができないのが相対的貧困なのです。
相対的貧困は日本国内でも深刻な問題となっています。
特に独身女性の貧困は大きな問題で、当事者は適切な支援を受けて生活を立て直さなければなりません。
日本における女性の貧困
男女の平均給与格差
男女の平均給与における格差を確認してみましょう。年代別で男女にどれほどの給与格差があるかを確認すると貧困の実態が見えてきます。
まずは以下の年齢階層別の平均給与を表した図をみてください。
(引用:平成24年版「男女共同参画白書」)
(引用:国税庁ホームページ「平成29年分 民間給与実態統計調査」,2017)
このように男女の給与格差は50代後半まで年代が上がるごとに大きくなります。以下に各年代における男女の給与の「格差」をまとめました。
年代別の男女の給与格差(いずれも男性が高い)/年 | |
19歳以下 | 44万円 |
20~24歳 | 36万円 |
25~29歳 | 75万円 |
30~34歳 | 146万円 |
35~39歳 | 204万円 |
40~44歳 | 261万円 |
45~49歳 | 320万円 |
50~54歳 | 375万円 |
55~59歳 | 371万円 |
60~64歳 | 276万円 |
65~69歳 | 190万円 |
70歳以上 | 145万円 |
全体平均 | 245万円 |
特に30代以降の格差は、非常に大きくなります。45歳から59歳までの間は、男性の平均給与が女性の2倍にまでなるのです。このように男女間における平均給与の格差は非常に大きいことがわかります。
そして給与格差を確認することで、女性の貧困の実態が浮かび上がってきます。
上図の給与を平均すると、女性は25歳から59歳まで一貫して300万円前後しか給与を得られていません。
そして格差があることと同時に注目すべきは、「女性の給与が歳を重ねても一向に上昇していない点」です。この理由としては、以下の2つが主に考えられます。
- 非正規雇用で働く女性が多いこと
- 女性の管理職が少なく、給与の上昇幅が小さいこと
非正規雇用については、結婚・出産を機に非正規雇用にならなければならない環境に身を置く女性もいるため、個人の責任だとは言えません。
また、管理職についても同様で、女性の能力が低いために管理職における女性比率が低くなっているとは言い切れません。
このように女性の収入が低いことについては、個人の問題だけではなく、社会構造における問題が関係しています。
(出典:国税庁公式サイト「民間給与実態統計調査」2018年)
(引用:国税庁「平成29年分 民間給与実態統計調査」,2017)
それぞれの年代で見る貧困の原因と特徴
ここからは年代別に女性が貧困に陥る原因と特徴を確認していきます。それぞれの年代で貧困を招く原因は異なっていることがわかります。
20代女性
20代女性の貧困の原因として真っ先に挙げられるのは非正規雇用で働く女性が多いことです。専門学校・短大・大学といった教育機関を卒業した後も正社員として働かず、非正規雇用で働く人が多くいます。
さらに一度は正社員として働いたとしても、結婚や出産を機に非正規雇用になる女性も多数います。
また20代は収入が低い傾向にある点も貧困を招きます。収入が少ないことで急な出費に対応できず、小さなリスクが顕在化しただけで貧困となってしまうのです。
2010年に行われた「生活困難を抱える男女に関する検討会」では、女性の世帯類型別貧困率を見てみると、25歳までの単身女性、10代、20代後半~40代の母子世帯、50代以上の単身女性の貧困率が特に高いことがわかりました。
(出典:男女共同参画局「生活困難を抱える男女に関する検討会報告書」,2010)
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30代女性
30代女性の貧困は、既婚者にも起こるのが特徴です。
独身女性については先述したような非正規雇用を理由とした貧困がありますが、既婚の30代女性は以下のような原因から貧困に陥ることもあるとされています。離婚してシングルマザーになった配偶者が怪我や病気で働けなくなった配偶者と死別した
このような理由から既婚者であっても貧困に陥る恐れが出てくるのです。
2016年の全国ひとり親世帯等調査によると、離婚が原因でひとり親になったシングルマザー世帯はで8割を超えています。
このような状況になる平均年齢は、シングルマザーが33.8歳、この方々が育てる子どもの末っ子の平均年齢が4.47歳となっています。
小学校に入学前の子どもがいることから、シングルマザーとなった女性は必然的に子育てに充てる時間が必要となるため、正規雇用の仕事にも就きづらい状況が生まれてしまいます。
(出典:
厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査(ひとり親世帯になった時の親及び末子の年齢),2016」)
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40代女性
続いては40代女性の貧困について確認します。40代女性であってもここまで紹介した非正規雇用の独身者、離婚や死別によるシングル化、住宅ローンや保険料による支出の増加などは依然として貧困の原因となります。
しかし、40代になるとそこに以下のような原因も加わります。子どもの成長による教育費の増加自身の健康悪化による医療費の増加親や親族の介護費の増加非正規職員の割合の増加
このように年齢を重ねるからこそ生まれるリスクが貧困に繋がっていきます。
2017年に発表された国民生活基礎調査では、母の仕事の状況について末っ子の年齢階級別にみると、子どもの年齢が高くなるにしたがっ て「非正規の職員・従業員」の母の割合が高くなる傾向にあることがわかっています。
離婚している40代の女性の場合、非正規雇用の給料で子どもの進学にともなう授業料や教育にかかる費用が多くなるため、家計が苦しくなることもあります。
また、親の介護費については、高額であることに加えて、女性が仕事を辞めて介護にあたる場合もあり、非常に大きな問題です。
(出典:厚生労働省「平成29年国民生活基礎調査(世帯数と世帯人員の状況)」,2017)
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50代女性
最後に50代女性の貧困の原因をみていきます。こちらは40代女性の延長上にある原因が多くを占めますが、その中で特筆すべきは以下のものです。熟年離婚自身の病気
熟年離婚をすると、これまで専業主婦として暮らしてきた場合は女性は一人で収入を得て生活していかなければいけません。
長年就労から離れていると、すぐに正社員になることは難しくなります。
さらに50代になると自身の健康も悪化する恐れが高くなります。2016年度の国民生活基礎調査では、過去1年間で人間ドックを受診した年齢は男女とも50~59歳が最も高く、女性は7割以上の人が受診しています。
保険に加入しておくことである程度対応できる病気も多いですが、保険料の支払いが増加するというジレンマがあります。
(出典:厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」,2016)